幻想's

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ネットや雑誌の広告で「熟練の職人がひとつひとつ丹念に作り上げました」みたいなコピーを見ることがある。見るたびに疑問に感じるのだが、あれに納得してしまう人ってどれくらいいるのだろうか。

不器用で、集中力が散漫な自分からすると、絶対に人間よりも機械の方がミスなく正確に作れるはずだ、と思ってしまう。人間にしかできない繊細なものを作ることができる状況はあるかもしれないが、大量のものを安定して作るとなると、疲れもしらず確実に作り上げる機械のほうがトータルでクオリティが高いのは間違いない。人間は数少ないものを100点で作れるが、機械は大量のものを90点で作るイメージだ。

なので、自分は「手作りです」というのにはまったく感動しない。むしろ最新の機械で作られています、というほうが心が動かされる。

これと同じようなものに「手間ひまかけたものが即席で作ったものよりすぐれている」というものがある。

構想にxx年、制作にxx年かけた超大作と言われても、時間ばかりいたずらに費やしてしまったかもしれないし、集中せずにだらだらしていただけかもしれないので、クオリティを担保する証左にはならない。むしろ、短期間で集中して作ったほうがすばらしいものになることだって大いにあり得ることだろう。

ITの世界では、時間がかかったり遅れたりすると批判の対象になりやすい。1年延期したからすばらしいシステムができるはずだ、と期待する人は少ない。むしろ、プロジェクトが炎上していてリリースされるものも薄氷を履むようなギリギリの品質なのではないか、と疑うのが自然だ。

一方で、創作や芸術は逆に評価の対象になりやすい傾向があるように感じる。公開が遅れる映画や、数年かけて作った曲のようなものはしばしば見かける。ITの世界にいる身からするとうらやましい限りだ。一度でいいからプログラミングにとても時間がかかったことで評価されてみたいものだ。

このようなものには他にも「自然のものは人工のものよりも安全」や「限定品は普及品よりも優れている」のようなものがある。ステレオタイプに陥らないよう、フラットな感覚でものごとを見ることが肝要だと思う。

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pupepa

COBOL Engineer

Objective-Cが書けるiOSエンジニアを一時休業してWebアプリケーションエンジニアに。

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